介護での「香りの効用」について

2022 年10 月より、宮前区平の介護事業所『デイサービス らいおんの手』様にご協力を頂きながら『香りの活用に関する試験運用』を開始しました。

11 月 10 日 (木)に第二回の試験運用を行いましたので、その際の利用者さまのご様子について、報告をさせて頂きます。

試験運用の主な目的は以下の2つです。

○香りによる記憶の想起を通じて、ご利用者さまの活力を刺激する過去の想い出を振り返り、語っていただくことは、ご利用者さまにとってとても良い刺激になります。

○香りを契機とした生活リズムの構築

認知症の方にとって困難な生活リズムの構築について「この香りがしたらマッサージの時間」といった補助支援の効果が期待できるか、試験していきます。

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今回の運用試験では、前回に引き続き“ユズ”“ヒノキ”といった 和精油を使用しました。甘さだけでなく、苦味や樹木の鼻に抜ける ような香りが特徴です。

また現在当社で進めている『かわさきカンキツオイルプロジェクト』の試作品である、川崎市高津区で収穫された摘果ミカン(成熟する前の青いミカン)を蒸留したオイルも使用しました。

青ミカンの若いサワヤカな香りが特徴です。どちらも日本人には馴染み深い香りとして、ご利用者さまの想い出や記憶を想起する効果が期待されます。

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○若い頃にワンダーフォーゲルをされていたご利用者(軽度認知症)

初回試験時には「若い頃山に登っていた」「当時の怪我が原因で脚の左右に見た目の違いがある」などの話をお聴きしました。

今回の試験時には“ご自身の山での想い出”のお話をしながら“その
時の情景や香りを思い出そうとする仕草”をされていました。
また香りそのものに関する感想(真っ直ぐな感じの香り、など)を、
ご自身の言葉で説明してくださいました。
前回の試験時と比較して、話の内容に広がりがあったことが大きな特徴です。引き続き試行回数を増やしていき、経過を観察して参ります。

○以前目黒に住まわれていたご利用者(中等度認知症)

前回の試験時には「目黒の街に関すること」「遠足で川崎に来たこと」のお話が大部分を占めていました。

今回の試験時には“香りそのものに関する感想”“自分の 脚に関すること”など、違う方面のお話を多数されていました。

香りに関するお褒めの言葉も頂き、全体的に笑顔でいられる時間がとても長かったのも大きな特徴でした。
マッサージで使用するタオルを温めている最中にも香りを嗅いでいただいたところ、突如「お家に帰らないと」と言い出された瞬間がありました。少しするとマッサージをしている現在の時空間への認識に戻られました。
突然の「帰宅する」という発言について、香りが何かしらのきっかけとなって、そういった情動を引き起こした可能性について、たいへん興味深いものと考えています。

また『らいおんの手』代表の吉川寛子さまからは、以下のようなお話を頂きました。

「アロマ運用試験時のご利用者さまの様子をみていると、普段施設のスタッフと接しているときとは異なる、別の回路が構築されているように感じます。 新しい人との出会いや、五感を通じた体験を通じて、とても活き活きとされているようにみえます。 普段は出て来ないようなお話もあったので、ご利用者さまの新しい一面を知ることができました。

試験運用の継続を通じて、ご利用者の皆さんに少しでも笑顔の時間が増えたら、ほんとうに嬉しいです。」

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 今後も同事業所にご協力を頂きながら、試験運用を継続して参ります。

 ご利用者の皆さん、そのご家族、そして事業所の皆さんまで含めて「みんなで幸せになれる方法」を 模索していけるよう、当社にできることをひとつずつ、実践していきます。